院長のコラム

医療機関の基本理念

最近は多くの医療機関で『基本理念』をうたっているのをホームページ上で見かけます。しかしながら、「患者様の人権を尊重し、、、」とか、「患者様中心の医療を目指し、、」とか、「地域の皆様に愛される病院、、」などの抽象的な表現が多く、美辞麗句が並んでいる割には、具体的な内容が見えて来ないものが多いように感じます。

具体的でないから『基本理念』なのだとも言えますが、数年前に当院でも院内外に向けての当院の基本姿勢、目標を設定しようと思い立った際、もっと職員や患者さんに判りやすい言葉で表現しようと思いました。そこで決めたのがこのホームページ上にも出ている『いま目の前の患者さんがもし自分の親兄弟、子供だったら、どのような医療・看護を提供してあげたいか』というものです。

例えば、白内障の手術は我々眼科医にとっては数多く行う日常的な手術で、術前の説明に関しては、病院によっては集団説明会で多くの患者さんにいっぺんにお話ししたり、看護婦さんにすべての説明を任せたりしているところも多いようです。しかしながら、患者自身にとっては一回きりの手術ですし、自分や親が手術を受けるのであれば、執刀医から個別に詳しい説明を聞きたいという方が当然多くいらっしゃると思います。当院では手術を受ける患者さんには、個別に合併症などの話も含めて執刀医の私から説明するようにしていますが、15分程度で終わる手術の説明に医師からの説明だけで約30分、看護婦さんからの補足説明を含めると1時間近くかかってしまいます。患者側からすればこのようなことは当たり前のことですが、説明に料金設定がない今の保険制度では、医療機関側からするとこのような説明に時間をかけるのは非効率ですし、このようなやり方では、一人の医師が多数の手術をこなすのは困難です。それでも自分の家族だったらこうしてあげたい、ということを考えて、出来る限り仕事をする上での基準にして守って行きたいと考えています。

(まあ、逆に時々は、「この患者さん(特に礼儀知らずの子供など)が自分の家族だったら、怒鳴り倒すところだが、、」とムッとすることもありますが、その場合にはこの『基本理念』はなるべく封印するように努力しています。)

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