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院長のコラム「2023年を振り返って – その1」

1年が経つのが、体感的にどんどん早くなってきている感じです。もう年一回の更新が恒例になってしまった「院長のコラム」です。

 

医療界全体で見ると、今年一番の出来事は新型コロナウイルス感染症が、2類から5類へと分類が変更されたことですね。長かったコロナ禍がようやく終息に向かってきたのは大変喜ばしいことです。パンデミックが始まった第一波の頃は、若い人でも急速に重症化して死に至るケースが相次ぎ、大変な騒ぎになりましたが、国をあげての大規模なワクチン接種や、マスクや手指消毒を始めとする徹底的な感染予防策、外出や移動の自粛などを経て、ウイルス自体も時が経って変異を繰り返すうちに毒性が弱まってきて、なんとか以前の正常な生活様式が戻ってきました。

 

ネガティブな面が多かったコロナ禍ですが、この3年で変わってきた良い面もありました。私たちの身近なところでは、マスク着用や手指消毒を徹底することで、新型コロナウイルス以外の感染症もかなり予防できていたことに改めて気づいたことです。今年、久しぶりにインフルエンザが流行し始めていますが、マスク着用の習慣がなくなってきたことと無関係ではないと思います。私自身も、コロナ禍の3年間は殆ど風邪一つ引くことがなく、健康に過ごすことができました。まだ病院やクリニックの中ではマスク着用が推奨されていますが、当院でも眼科はご高齢患者さんの比率が非常に高いので、院内では必ずマスク着用をお願いしています。いずれは患者さんへのマスク着用は強制しなくなると思いますが、眼科は検査中などは患者さんとの距離も近いですし、職員のマスク着用は今後もずっと継続することになると思います。

 

また、コロナ禍で外出や移動が制限される中で、インターネットを利用したWEB会議などが一気に普及したことも良かった面の一つでしょう。医療界でも、学会活動がオンライン化されて、参加者が現地に集合することなく、WEBで行うことが一般化しました。休診にして学会場に出かけなくても家で勉強ができるというのは非常に便利でした。昨年ぐらいからリアルに現地に集う形式が徐々に復活してきてはいますが、リアルとWEBを併用したハイブリッド形式の学会は今後もなくならないのではないかと思います。しかし、自宅でPC上で発表を聞くのと、リアルに学会場に出かけて参加するのとでは、後者の方が直接に他の参加者の先生方とface to faceの意見交換、交流ができるので圧倒的に刺激的で頭に残ります。今後も時々リアルで、普段はWEBでという感じで勉強していければと思っています。

 

今年も言及しておかねばならないのが、昨年の年末コラムにもしつこく書いた「医薬品不足問題」ですね。今年も全く改善されず、あらゆる分野の医薬品の供給が滞っています。今年は眼科の点眼薬でも、日常的に非常に多く使われている「フルオロメトロン」という点眼薬に、一時期供給制限がかかりました。厚労省がずっと推進してきたジェネリック政策で、すでに全体で見ればジェネリック薬の使用割合が80%程度に上がっています。しかし、数年前に起こった死亡事故で発覚した製造過程の不正で、次々とジェネリック医薬品の出荷停止や自粛が相次ぎました。しかし、ジェネリック推進政策によって信頼性に問題のない先発医薬品の需要が減っていて、先発薬メーカーの生産ラインも大きく削減されて急に増産もできない状況で、市場に薬がないという事態が続いているわけです。とにかく医療費削減のために安ければなんでも良いという感じで推進されてきたジェネリック政策のツケが出てきたと思います。医療費削減も大事ですが、医薬品は何よりも安全性、信頼性が第一ですから、先発薬メーカーが作るジェネリック:AG薬(オーソライズド・ジェネリック)をもっと普及させるような政策をとるべきだと個人的には思います。

 

当院の2023年での新しい出来事では、まずは6年ぶりに白内障手術装置を更新したことです。私が眼科医になってから30年以上経ちますが、昔の角膜(くろめ)の半周10mm近く切開して濁った水晶体全体を丸ごと摘出していた嚢内摘出の時代から、超音波乳化吸引術の普及や、多焦点など眼内レンズの進化まで、白内障手術の大変革が起こった30年くらいをずっと経験して追いかけてきました。切開幅も3mm以下で済むようになり、ある程度行き着くところまで達した感はありますが、更なる安全性の向上、より良質の術後視力を求めて、小さな改良は続いています。
2017年に白内障手術装置をJohnson & Johnson Vision社のSignature Proに買い換えましたが、6年後の今年、その後継機種『VERITAS』を新たに導入しました。最近の手術装置は電子部品の塊のようなものですので、基盤の寿命などで10年くらいで故障する確率が増えてきます。前の機種はまだ6年ですし、超音波乳化吸引のマシンも行き着くところまで進化した感がありましたので、このまま使い続けるつもりでしたが、6年間でどのくらいの進化があったのか、新しいマシンに興味もあり、デモ(試用)をお願いしました。大きな違いは、灌流液が重力式でなく加圧(ボトルに空気注入して圧をかける)式が使えるようになったことや、吸引系チューブが硬く細径となって、サージを抑制して手術中の前房安定性がかなり改善したこと、センサーなどが進歩して反応がさらに早くなったことです。業者さんには「買い換えませんけど、デモだけお願いします」と言って使い始めましたが、今回の改良点は手術の安全性がさらに高くなるのを実感できました(6年前のバージョンアップよりも、今回の進化度の方が大きい印象)ので、思い切って購入することにしました。自分の年齢を考えると、このマシンが最後の更新になるかもしれません(なーんちゃって、また6年後は分かりません)し、高い買物ですが、いい道具でストレスなく快適な手術を行いたいという欲望に負けました。『弘法筆を選ばず』なんて言われますが、眼科手術に関しては、上手い術者はいい道具を選んで使っておられるケースが圧倒的に多い印象です。私もまだまだ進化を止めずに頑張りたいと思います。

あと、当院受付の進歩としては、セミセルフレジ『OWEN』を導入しました。コロナ禍の中で一般のスーパーやコンビニなどで急速に普及してきた自動支払い機ですが、省力化するだけでなく、現金の手渡しを減らして感染予防にもなり、ヒューマンエラーで避けられない釣り銭ミスをなくすなど、大きなメリットがあると思います。同時に、クレジットカードや電子マネーなどキャッシュレス決済のシステムも導入しました(PayPayやd-払いなどのQRコード決済も来年早々には開始予定です)。セミセルフレジやキャッシュレス決済に関しては、機械の初期費用、管理維持費用、決済会社への手数料の支払いなど、経営者側としては経済的にはデメリットばかりなんですが、自分の日常生活の支払いでの利便性を考えると時代の流れで避けられないと思い、小さなクリニックではまだまだ導入されていないのですが、思い切って採用しました。患者さんにとっては、ポイントが付いたり、財布の中で小銭が膨れ上がることも無く、メリットの方が大きいと思いますし、実際にキャッシュレス決済を利用される方も予想以上に多い印象で、採用して良かったと思っています。

さて、コロナ禍もあけた2024年はどんな年になるのでしょうか。早く世界中で戦争、紛争が終結し、平和で安心した生活が送れる一年になって欲しいと願っています。古江中野眼科は、これまでと同じく、進歩の歩みを止めずにまだまだ頑張りたいと思います。

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