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院長のコラム『2025年を振り返ってーその1』

年に一回の更新が定着してしまいました(笑)、院長コラムです。「その1」は、当院における医療関連の話題からお伝えします。

 

まず2025年を振り返りますと、私が広島に帰って父のクリニックを継承開業してから、早いもので27年が経過しました。ここ数年は設備の経年劣化が進み、更新や修理に明け暮れる日々でしたが、今年も数カ所のエアコンや検査機械、手術装置の故障が重なり、維持費に頭を悩ませる一年となりました。

 

中でも一番の出費は、エレベーターでした。当院のエレベーターは定員5人の小型サイズですが、暗室の検査室や手術室が2階にあるため、高齢の患者さんが多い当院では、職員も含め毎日200~300回以上稼働しています。診療には欠かせない存在です。
1年以上前のこと、定期点検を契約しているHビルシステム社から「故障時の交換部品の製造が終了した。今後も安心して使用するためには、制御装置や部品を丸ごと取り替える大規模リニューアルが必要」との通告を受けました。数年前には制御装置の基板故障で職員が閉じ込められる事故もあり、修繕は不可欠と考え見積もりを取ったところ、予想を遥かに超える高額回答に驚きました。

 

そんな折、Facebookでの私のぼやきに、パーキングビルを管理している同級生が反応してくれました。「相見積もりをとった方がいい。僕の管理するビルでもH社の3,000万円という見積もりが、友人に紹介されたCSS(中国昇降機サービス)という会社では1,500万円になった。H社に断りを入れたら、慌てて『1,500万円でやらせてください』と支店長が飛んできたよ」と教えてくれたのです。

 

早速、広島に本社があるCSSに見積もりを依頼したところ、やはりH社の半額に近い金額でした。後日、H社に契約終了の連絡をすると、案の定「再見積もりさせてほしい」と言われましたが、「後出しジャンケンのような駆け引きは好みません。最初の一発目の提示額で判断します」とお断りしました。

 

9月に1週間ほど休診し、箱以外の殆ど全てを交換する工事を行いました。患者さんにはご迷惑をおかけしましたが、制御装置からワイヤー、操作盤まで新品になり、騒音も少なくスムーズな動きになりました。見た目は変わりませんが、中身は予想以上に快適になりました。

 

また、これを経年劣化と呼んで良いのか分かりませんが、私個人も初めて大きな病気を経験しました。還暦を過ぎても持病はなく、常用薬もなし。健康には自信があったのですが、2月頃に体調を崩しました。

 

倦怠感と38度程度の発熱が続きましたが、当初は風邪程度に考えていました。解熱剤を飲めば仕事もできたので騙し騙し働いていたところ、次第に咳と痰が悪化し、息苦しさを感じるようになりました。念のためパルスオキシメーターで酸素飽和度(SpO2)を測ると、なんと80%台(正常は96-99%)。「ほぼ呼吸不全」という驚愕の状態でした。金曜の朝、術後診察を終えてすぐに仕事を中断。副院長の同級生が営む呼吸器内科クリニックへ駆け込むと、レントゲンで両肺が真っ白になっており、即入院の指示で吉島病院へ紹介されました。

 

診断は「間質性肺炎」でした。原因は様々で、新型コロナの重症化後や、アスベストなどの粉塵、自己免疫疾患、薬剤の副作用などが挙げられますが、原因不明の特発性間質性肺炎もあります。私の場合は、昨年から患っていた難聴のために処方されて服用していた漢方薬による「薬剤性間質性肺炎」が強く疑われました。
結局、2週間近く入院してステロイドパルス療法を受け、退院後も内服治療を継続。幸い呼吸器内科の先生のおかげで急速に回復し、現在は無治療で経過観察となっています。後遺症として肺の線維化が少し残り、肺機能も若干落ちてはいますが、仕事や私生活には全く支障なく過ごせています。

 

間質性肺炎は専門外でしたが、今回自ら経験し、勉強することで理解が深まりました。原因不明の「特発性間質性肺炎」は指定難病であり、中でも「特発性肺線維症」は診断確定後の余命が平均2~5年で、5年生存率が30~50%という非常に厳しい病気です。慢性の経過をたどる方でも、風邪やインフルエンザなどの感染症をきっかけに「急性増悪」を起こすと命の危険に直結します。だからこそ、マスクや手洗いといった感染予防が極めて重要なのです。

 

当院の問診票を見ても、間質性肺炎の患者さんは決して少なくありません。また、抗がん剤治療中の方や免疫力が低下している方も受診されます。そのため当院では、コロナ禍以降も院内でのマスク着用を全員に継続してお願いしています。

 

コロナ禍では、皆さんの徹底した感染対策により、インフルエンザなどの感染症も激減しました。マスクだけで完全に防げるわけではありませんが、飛沫をカットし、リスクを下げることは可能です。病院という「感染リスクを減らしたい方々が集まる場所」では、どうかマスク着用にご協力いただきたいと考えています。

 

なぜあえて自分の病気のことにまで触れたのか。それはGoogleの口コミなどで「今の時代にまだマスクを強要するのか」という書き込みや、受付でのクレームを時々耳にするからです。少なくとも私が院長である間は、院内のマスク着用継続を方針とさせていただきますので、悪しからずご了承ください(お忘れの方には、コンビニよりお安い1枚20円で販売しております)。

 

さて、来年2026年は2年に一度の診療報酬改定の年です。日本の国民皆保険制度では、医療行為の価格(点数)は全国一律で決められており、1点=10円で計算されます。
現在、医療機関の経営悪化は深刻で、全国の病院の約7割が赤字という異常事態です。5月に放送されたNHKの番組『断らない病院のリアル』では、神戸市立医療センター中央市民病院の過酷な現状が映し出されていました。同院の院長は、私の広島学院中高の先輩である木原先生で、京都大学から神戸中央市民病院循環器内科部長、広島大学医学部教授を経て中央市民病院の院長として戻られました。私もかつて勤務していた懐かしい病院ですが、この病院は24時間オープン年間3万件の救急患者を断らずに受け入れる救急外来をやっています。最新の医療設備を備えて、各診療科のスタッフも主に京都大学医学部から派遣された優秀な医師たち、勉強する向上心の強い看護師などのスタッフが身を粉にして働く1000床の大病院で、神戸周辺の「最後の砦」的な病院として、患者さんたちの信頼も厚い病院です。そのような志の高い大病院でさえ、昨年度は34億円もの赤字を計上したといいます。

 

光熱費、医薬品、医療機器、全てが値上がりする一方で、診療報酬は改定のたびに削られています。さらに「損税」の問題もあります。医療機関は仕入れ時に消費税を支払いますが、患者さんからいただく医療費に消費税を上乗せすることはできません。税率が上がるたびに、医療機関の持ち出し(赤字)が増える仕組みなのです。

 

来年の改定では3%程度の引き上げが議論されていますが、30年ぶりの上げ幅と言っても、現状の赤字を埋めるには到底足りません。高度な医療、例えば手術ロボット(ダヴィンチやヒノトリ等)は患者さんの体の負担は少ない素晴らしい手術機械ですが、本体だけでなく、消耗品費も高額すぎて、保険診療の点数では赤字になると聞いています。
1958年から一度も変わっていない「1点=10円」という設定は、インフレに合わせたスライド調整を検討すべき時期に来ています。去年まで何度も院長のコラムに書いてきた薬価の過度な引き下げによる薬不足も含め、国民皆保険制度は今、維持できるかどうかの瀬戸際にあります。財源の問題は避けて通れませんが、終末期医療の在り方も含め、今こそタブー視せずに議論すべき時ではないでしょうか。

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