2005年7月11日
前回のコラムで日本の健康保険制度のいい面について述べましたが、日本の医療制度のそのいい面を逆に悪用(?)され、健康保険の赤字に貢献している方(いわゆる医療費の無駄遣い)も非常に数多く見受けられます。前回も述べたように日本の医療制度のいい面は、患者さんが受診したい医療機関を自由に選べる点も大きな特徴です。しかし、かかりつけの医院で自分の納得のいかない診断がなされた時、皆さんはどうされるでしょうか?
1) 黙って内緒で他の医院・病院に受診する。
2) 他の患者さんや友達に相談して、評判の医院に受診してみる。
3) そのかかりつけ医に質問して、納得がいかない回答であれば、他の先生の意見も聞いてみたいと正直に告げ、紹介状を書いてもらう。
おそらく(間違いなく)1か、2の方が大多数と推測します。自分が患者だったら3の選択肢は非常に勇気がいることですし、出来ないかもしれません。
『セカンド・オピニオン』という言葉を聞いたことのある方は多いと思います。これは、アメリカから入って来た概念と思いますが、日本ではちょっと勘違いされている面が多いのではないかと思います。医学は自然科学の中でも非常に未熟な分野です。皆さんが思うほど医者は診断能力も高くないし、はっきりと教科書的に分類できない病気もたくさんあるのです。当然、日常の診察の中で、診断に迷ったり、治療方針の選択に苦慮するケースだってあります。そんなとき、紹介状を書いて、年齢や経歴に関係なく自分が尊敬できる、少なくとも自分と同等以上に熱心に医学の勉強をしていて素直に相談するに値する同業者に紹介状を書く、それが『セカンド・オピニオン』だと思うのです。言い方は悪いですが、医学的知識やその医師のバックグラウンドも知らない素人の患者さんが、手当り次第に近所の病院を廻って診断を求めることが『セカンド・オピニオン』だとは思いません。それは貴重な医療費の無駄遣い以外の何者でもありません。アメリカと違って、日本では、そこまではっきり要求する患者さんに出会ったことはありませんが、そういう方(上記の3のような選択をされる方)が現れることを実は内心期待もしています。勉強している医師は自分の限界も知っていますし、自分の専門分野ではどの医師がどういう治療をしていて成績がどう、ということも知っています。自分が専門外の分野でも、誰に相談すればいいかは多くの場合は判りますし、判らなければそれを知っていそうな人に聞けるネットワークぐらいは持っています。逆にそのようなことが出来るということがいい医師の基準にもなり得ると私は考えています。納得がいかなくてセカンド・オピニオンを求めたければ、どこに行けばいいかを、主治医に訊ねて欲しいと思います。それで主治医にひどく怒られるようであれば、その医師が主治医にする価値のない医師であるか、あるいは、あなた(患者さん)が風邪ひきで3、4軒の医者を掛け持ちしようなどとしている大馬鹿者か、そのどちらかです。
『餅は餅屋』といいます。誰に聞けばいいか、一番良く知っているのはやっぱりその業界人なんです。ぜひ、紹介状を求めてから、セカンド・オピニオンを求めに行ってみて欲しいと思います(その方が同じ検査をする時間と費用が省けて、国家的見地から見ても大きな節約になります)。