院長のコラム

サービスとは

医療現場では、ときどき冷や汗をかかされることがあります。先日の水曜日、看護婦さんがやって来て、「手術室の掃除の際に、白内障手術装置のフットスイッチ(手術医が機械を操作する操作板)をちょっと20cmぐらいの高さから落としてしまったんですが、大丈夫でしょうか?見た目は異常ないんですが。」と言われました。すぐに電源を入れさせて確かめたら良かったのですが、「そのくらい大丈夫だろう」と、軽く聞き流していました。
その翌日の手術日の朝、8時前にその看護婦さんから電話がありました。「先生! 電源を入れたら”foot-switch error”という表示で、動きません!!」しまった、と思っても後の祭りです。9時から手術開始予定で、そろそろ準備のために患者さんもやってきます。さあ、困った! 未だ8時前で、手術機械の会社に電話しても、せいぜい留守電が関の山で、うまく連絡がついてもすぐに代替えの機械も用意できないだろうなという予想で、今の最新の機械を購入する前の一世代前の機械をバックアップで引っ張りだして使わないといかんかな、と思いつつ、NIDEKという眼科機械の会社の広島支店に電話をかけました。
なんと!幸運なことに管理職のOさんが既に8時前に出社していて、すぐに電話に出てくれるではありませんか。しかも、事情を話してフットスイッチの予備ってありませんか?と聞くと、「ありますよ。9時までにお届けすればいいんですか。」という誠にありがたいお返事。平身低頭でお願いすると、横川の支店から15分で届けていただき、予定通りの時間から6名の予定手術を順調に行えました。
実は、5、6年前にも、前の機種を使っている頃に、やはり機械の突然の故障で手術当日の朝に使えないことが判り、その時もNIDEK社の方が、代替え機械を30分で持って来てくれて、事なきを得た経験がありました。そのときの経験から、いざ機械が壊れたりしたときのためにバックアップは用意しておくべきだろうと思って、もう一台、今の最新機種を買った訳です。しかしながら、やはり古い機種が使えるとは言っても、「セルシオが故障したので代車はしばらく使っていなかったカローラです」、というようなもので、やはりいい気持ちはしませんので、緊急事態に素早く対応してくれる会社の支店がすぐそばにあって、本当に助かりました。
最近の白内障手術機械は本当にハイテク化していて、故障がすぐに直るようなものではありません。当院の機械は国産のNIDEK社の最高機種で2000万円近くしますので、そうそう同じものを2台も買う訳にも行きません。こんな故障があって、早朝に素早く対応していただけると、「この機種を選択して良かったな」と心から思いました。
手術機械としては、性能が良くなければならないのは絶対条件ですが、大差ない機能であったとき、このようなサービス体制を実演していただけると、次もこの会社の機械を買おうかなと思ってしまうのも無理はないように思います。本当のサービスとは、マメに訪問して情報を提供してくれたり、値引きをしてくれたりする事以外に、本当にこちらが困っているときに素早く対応してくれる、本当に切実なニーズにすぐに応えてくれる事にあると、教えていただいた気がします。自分たちの医療サービスも見習って行くべき点があるなと、感じた一日でした。
(改めてこの場をお借りして、NIDEK広島支店O氏に深く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。)

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