院長のコラム

まいったなー、テレビ取材

先週テレビの取材を受けました。広島テレビの「テレビ宣言」という地元の情報番組で、テーマは『ドライアイ』とのことでした。最初は、県の眼科医会に協力してくれる眼科Dr.の推薦を依頼したらしいのですが、なぜか医会としては断られ、ある理事の先生から個人的に私に振られて、テレビ局の人から「○○先生から紹介を受けたのですが、お引き受け下さると聞きまして、、。」と電話があった次第。

 

電話で依頼を受けた金曜日にはすでに『次の火曜日収録で木曜日放送』と決まっていて、こちらの都合などおかまいなしに『火曜の昼間にビデオ取りさせて下さい』、とのこと。連休明けで忙しいことが予想されたのですが、どうしても昼間でないと困ると主張されるので、昼休みをつぶして協力することに。土曜日に番組の担当の方が下調べに話を聞きに来られたので、製薬会社が作って配っている一般の方にも判りやすい、ドライアイの資料を多数用意して(ドライアイの点眼ではトップブランドの“ヒアレイン”の参天製薬の方、ご協力ありがとうございます)、その担当者に差し上げました。どういう感じの番組にする予定か、尋ねてみたところ、『先生のインタビューと、目薬の話や、眼にいい料理レシピなども』と言われるので、更に突っ込んでみたところ、『栄養士の方に聞いたら、青魚がドライアイにもいいらしいとのことで、、。薬局の方に聞くと今一番売れているのはこんなメグスリらしくって、、。』と言われたので、『魚とドライアイの話は一度も聞いたことありませんねー。ドライアイに特にこれがいい食べ物っていうのはないと思いますけど。 市販のメグスリにも最近我々が処方する薬に入っているようなヒアルロン酸などの成分が入っているものもあるようですけど濃度が薄いし、逆に有害な防腐剤の濃度が濃いものもあるので、市販薬に頼っていると問題のあるケースもあるので、専門医に受診するようにということは強調しておいて下さいよ』と軽く釘を刺しておきました。(今思うと、担当者の新入社員のお嬢さんが美人だったので、ついつい甘くなって、強く言っておかなかったのが私の敗因でした。)

 

ビデオ収録の日は、カメラクルーとレポーターの女性も来院し、インタビュー形式で結構詳しい話(シェーグレン症候群とか、マイボーム腺機能不全、結膜弛緩症、治療では涙点プラグの話など)も含めて、1時間ぐらいにわたってお話をしました。実際にドライアイと言われたことのあるレポーターの方の眼を診察したり、地方学会の発表にも使ったドライアイの前眼部画像や涙点プラグの実物もお見せして、かなり協力させていただいたつもりです。

 

木曜日の夕方5時過ぎから放送されたのですが、大幅にカット編集されるのはもちろん想定の範囲内でしたが、ああいう内容に持っていかれるとは、、、愕然としてしまいました。私のインタビューの部分はビデオ取りの最初の2、3分で話した一般的なドライアイの症状などの話だけで、専門医としては力を入れて話したつもりの詳しいところはすべてカット。次に、チェーン店薬局の薬剤師さんが登場して、市販のメグスリをブランドの実名も挙げて推薦し(気になってあとで調べてみたら、コンドロイチン硫酸とセルロースなどの昔からある成分で、メンソールや防腐剤もしっかり入っている、昔からよくあるタイプの市販薬。保湿効果の高いヒアルロン酸は入っていないもの)、レポーターが『これは、トロッーとしていていいですね』などと言う始末。さらに、次に栄養士のお姉さんが登場し、『ドライアイは眼精疲労が原因ですから、眼の周りの血行が良くなるDHAなんかを含んでいるサンマが効くんですよ』などと、医学的に全く意味不明の説明をして、強引にサンマ料理のレシピ紹介に持っていかれた、という次第でした。

 

まあ所詮、科学的な信憑性の問われない地方局の情報番組で、放送の中で私自身が市販のメグスリや、サンマ料理をドライアイに効くと勧めたわけではないので、特に正式に抗議などする気はないですが、あの編集のやり方じゃあ、私の役割はメグスリとサンマの前座かいな、という感じ。忙しい中、飯を食う時間も潰して協力したワシの時間を返せー、といいたい気分で、放送終了後にしばし落ち込んでいました。

 

依頼を受けたときには、なんで眼科医会は断ったのかなーと思っていましたが、もしかしたら内容を詳しく聞いて知っていたからか、と勘ぐりたくもなってしまいました。私のところに来たのは放送日の2日前ですから、そのときにはメグスリやサンマのビデオ収録も済んでいたと思われ、ストーリーは出来上がっていたのでしょうから、なんか、『はめられてしまった』気分です。

 

いつも政治家なんかが、テレビ局が都合よくカット編集して趣旨を曲げて放送することを怒っていますが、今回はその気持ちがよくわかりました。皆さんも気をつけましょうね。

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