院長のコラム

タバコの値上げに思う

7月1日からまたタバコが値上げになりました。セブンスター、マイルドセブンなどの主要銘柄が、一箱(20本入り)300円になったようです。何を隠そう、私も以前は立派なスモーカーでした。大学入学後にタバコを覚え、18歳から(ごめんなさい)4年前まで20年以上、大体一日一箱以上は吸っていました。学生時代を含め、何度か禁煙も試みましたが、飲み会や麻雀などで隣の人が吸っていると、ついつい挫折してまた習慣的に吸い続けていました。確か、私が吸い始めた二十数年前は、一箱180円だったと記憶しています。

 

やめるきっかけになったのは、開業してから数年経って、近所の開業医の先生が何人か肺ガンで立て続けに亡くなることがあって、『まだこれだけの借金を残して、自分が死ぬわけにはいかないな』と思ったりして、すっぱりとやめてしまいました。やめてみると確かに食欲も増しますし、少し太った気もしますが、吸いたい気も滅多に起きませんし、禁煙成功と言っていいと思います。

 

やめてみて感じたのは、自分がタバコの匂いに非常に敏感になったことです。自分が吸っていたときには感じませんでしたが、止めてからは、診察中に患者さんの顔が1m以内に近づくとスモーカーかどうか、直ちに判別できるようになりました。眼科の診察中は、細隙燈顕微鏡という機械で目を観察するときに、30cmぐらいに顔が接近しますが、喫煙者の息の臭さが非常に気になります。感覚的にはキムチやニンニク料理を食べた人と同じくらいに臭うので、思わず息を止めて診察するほどです。自分が喫煙していた時は、患者さんが同じように感じていたんだろうなと、禁煙して初めて気がつきました。家族と外食していても、食事中に隣でタバコを吸われると、せっかくのおいしい食事の微妙な香りも損なわれるし、子供と一緒の時などは「迷惑だなー」と感じるように様にすらなってきました。それまで自分のタバコの煙がどれほど非喫煙者の周りの人たちや家族に迷惑をかけていたかということに気がついて、非常に申し訳ない感じがしました

 

私は自分が長年スモーカーだったので、喫煙する人には比較的まだ寛容なほうだと思います。別に煙草を吸っている人の人格まで否定したりする気はありません。しかし、喫煙者は、この時代においては自分が社会では決して歓迎されていないことをしっかりと自覚して、遠慮しながら喫煙すべきだと思います。医学的には、私がここで改めて述べるまでもなく、タバコの有害性はいろいろな分野で証明されており、眼科領域でも加齢黄斑変性症などのリスクファクターであると言われています。国民レベルで見れば、タバコの害による医療費の増加も決して軽視できないことは言うまでもありません。また、公共の場所に喫煙所を設置したり、空気清浄機を備え付けたりするコストも全国レベルではかなりの額になっているはずです。その観点から言えば、タバコの害による医療費など社会コストの増加は、やはりスモーカーが負担すべきものであると思います。

 

そう考えてみると、値上げされたとはいえ、日本における現在のタバコの値段は本当に高いと言えるのかと疑問に思います。ネット検索してみても、欧米諸国では大体一箱500円以上が普通のようですし、オーストラリアでは900円以上するようです。タバコを全面的に禁止せよとは言いませんが、やはり値段は最低でも一箱500円以上、できれば1000円ぐらいまで値上げすべきだと思います。それで禁煙しようとする人が増えれば、医療費削減にも将来的にはつながるでしょうし、本当にタバコ中毒の人はたとえ一箱1000円でも吸い続けるでしょう。そうやって値上げで増収になった税金は、医療や環境整備の目的税として使ってほしいと思います。そうすれば喫煙者の人も、超贅沢品を吸い続けることが出来る成功者としてのステータスシンボルとして、また高額の税金を負担している社会への貢献者として、堂々とタバコを吸い続けることが許されるのではないでしょうか。

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