院長のコラム

2009年を振り返って

やはり年齢とともに体感的な時間軸は加速度を増しており、『この間お正月だったのに、、』という感じがしますが、2009年もあと1週間となりました。

 

今年を振り返って一番大きな出来事は、やはり政権交代でしょう。小泉改革以来のこの10年で(というよりずっと続いてきた自民党政権下で)表面化してきた様々な問題に対して、国民が『このままじゃあ、どうにもならない。とにかく一度交代して!』という意思を表明した結果だと思います。医療の分野でもこの10年間、医療費が削減され続けてきた結果、医師不足や地域格差など、いわゆる『医療崩壊』が進んでしまいました。その面では、我々医療人も今回の民主党政権には大きな期待を抱いていました。

 

総選挙時の民主党のマニフェストには、「累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車をかけました。総医療費対GDP(国内総生産)比を経済協力開発機構(OECD)加盟国平均まで今後引き上げていきます」と記載されていました。つまり、米国のGDP比16%はさすがに極端だとしても、高い高齢化率を加味して、日本の医療費を、現在のGDP比8.0%から11~12%程度まで(40~50%増)今後アップしていくことを打ち出していたのです。しかしながら、いざ予算編成となると、自民党政権下の今までと同じように財務省は医療費削減を主張します。彼らの主張は、『この財政難で公共投資も大幅に削減している。デフレも進行して物価も2%近く下落しており、診療報酬だけを上げることは出来ない』というものです。しかしながら、財務省が言う常套句の裏には、隠されているデータがあります。以下にある内科のDr.が書かれた記事から引用します。

 

『日本の公共事業費は確かにGDP比9%から半減して、現在は約4%です。しかし、日本以外のG7諸国の公共事業費は、GDP比2~3%です。だから、日本の公共事業費はいまだに欧米の倍近くなのです。かつて、ニューヨーク・タイムズが、「米国の半分以下の人口と4%の国土面積しかない日本が、米国の年間使用量と同じ分のセメントを使い、公共事業費は米国国防費を上回る」と報道しました。それくらい、今までの日本は突出した額を使っていました。公共事業費が以前より減っていることは間違いありませんが、もともと諸外国と比べて、とんでもない金額だったのです。その事実が国民に伝えられていないのではないでしょうか。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2273)』

 

昨日のニュースで、『政府は23日、公的保険が医療機関に支払う診療報酬の2010年度改定について、診療報酬全体がどれだけ増減したかを示す改定率を0.19%のプラスにする方針を公表した』という報道がありました。財務省の主張するマイナス改訂にならなかっただけでもマシかな、とは思いますが、『選挙ではあれだけ言っておいてたったそれだけかい!』というのが正直な感想です。

 

先頃行われた『事業仕分け』、確かに画期的な手法で、歯切れの良い蓮舫議員など仕分け人が、ばっさばっさと無駄な予算を切り捨てていく様子は、国民に大受けでした。私もニュースを見ていて面白いと感じました。しかし、自分がある程度の知識を持っている医療の分野での仕分けを見ていると、結局は財務省が用意した彼らに都合の良い資料だけを鵜呑みにして、この分野の予備知識に乏しい人たちだけで無差別に予算を削りまくった、という違った印象を持ちました。今後も続けていくのであれば、

  • 事業仕分けの対象を、独立行政法人や特別会計などにも踏み込んで。
  • 仕分けを検討する際の資料は、財務省のお役人が用意した都合の良い資料だけでなくて、政治主導で両方の立場から集めた資料をもとに検討を。
  • 仕分け人の中に、対象とする事業に詳しい人を一人は入れておく。(でないと、財務省の役人が作った都合の良いデータのトリックを見抜けない。)
  • というような改善を期待したいですね。『仕分け』が単なる『削り』にならないように、必要性の薄いところから本当に必要なところへ、という本当の意味での仕分けになるようにして欲しいと思います。

     

    『コンクリートから人へ』が民主党のキャッチフレーズでした。政治家の先生方には、国民の真の幸せのため、もっともっと頑張って欲しいと思います。最近暗い話題ばかりですが、来年が少しでも明かりが見えてくる年になるように期待したいと思います。

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