院長のコラム

患者さんアンケート調査について:その1

日常の診療の中では、患者さん達は我々の目の前では『ありがとうございました』と言って下さいますが、皆さん内心は色々とご不満の点もあるのではないかと思います。大きな病院だと待合室などに『ご意見箱』などが置いてあったりしますが、当院のような小さな診療所ですと、この方法では誰が投書したかが判ってしまいますので、なかなか患者さん達のホンネの意見が集まりません。 医療機関を運営していく上で、患者さん達の声、特にちょっとした不満などのホンネをなんとか聞き出して、明日以降の診療の改善に生かしたいという気持は、多くの医師が抱いていると思います。 その医療機関側のニーズに応えるために、患者さんアンケート調査(回収、統計処理、分析報告)を代行して請け負っている会社がいくつかあります。このような調査会社を利用して、私が父のあとを継いで開業した平成10年以来、今までに3回の患者さんアンケート調査を実施してきました。

最初のアンケート調査は開業後2年目でしたが、この時は開業して間もないこともあって、質問事項は自分で考えて結構質問の多いアンケートになってしまいました。しかしかなり多くの患者さんにご回答いただき、医院運営の上でかなり参考になる意見も多くありました。『当院を知って受診されたきっかけは?』という質問では、『近所だから』『患者さんからの口コミで』という方がほとんどで、電柱の看板などは誰も見ていないということが判り、最寄りの電車駅以外の広告看板などはすべて廃止しました。またネットで医院を検索する方も少し出てきていることも判り、自院のホームページを作るきっかけにもなりました。

その後しばらくは何も行っていなかったのですが、開業10年目となる2009年になって、そろそろ仕事のマンネリ化、向上心の停滞が懸念されたので、2回目のアンケート調査を行いました。この時は、前回の調査会社がすでに無くなっておりましたので、新たに ”QLife” ( http://www.qlife.jp/ )というネットでの病院検索サイトを運営している会社が行っているものを利用させてもらいました。この会社の行っているアンケートは非常にシンプルなもので、患者さんにお渡しする調査票は、
[5段階評価設問]

1. スタッフ応対面(医院スタッフの言葉遣い、態度など)
2. 医師応対面(医師の説明の明解さ、信頼感など)
3. 時間関連面(診察や会計の待ち時間の長さなど)
4. 施設設備面(医療設備や雰囲気、待合やトイレの快適さなど)

を5段階(「最高!」=10ポイント、「とても満足」=6ポイント、「やや満足」=3ポイント、「やや不満」=1ポイント、「とても不満」=0ポイント)で評価してもらうのと、

[自由書式設問]

      1.「当院の良いところを教えてください」

 

    2.「当院の改善すべき点を教えてください」

で、自由に文章で書いていただく、という2つの部分からなっています。

回答は、はがきや携帯、PCで QLife社に送ってもらい、1ヶ月間の調査期間の集計が終ったレポートを当院へ報告してもらうという仕組みです。

 

2009年のアンケート調査では、自由に意見を書いていただく部分で、スタッフの対応などは結構お誉めいただいたご意見がある一方で、一番苦情として多かったのが、『待合室の狭さ』、『待ち時間の長さ』でした。中には、『院長の愛想が悪い』という貴重なご意見もありました (^▽^;)。点数で評価する設問でも、スタッフや医師の応対面は5ポイント以上でしたが、時間関連面で3ポイント台、施設設備面でも4ポイントという厳しい評価でした。予想以上の辛口評価のようにも感じました。

以前から待合室の狭さ(詰めていただいても12名ぐらいしか座れませんでした)は承知しておりましたが、私が帰ってくる前年に建て替えられていた建物で、予算的にも改築は厳しいものがありました。しかしながら、この時のアンケート結果で苦情のほとんどがこれに関連するものでしたので、昨年の『院長のコラム』でも書きましたが、10年を経たこともあって、思い切って投資をして外来部分の全面改築を行う決心がつきました。

このたび、再びQLife社からアンケート調査してみませんかというダイレクトメールをいただき、ちょうど当院外来の改築から1年が経ちましたので、2011年4月に前回と全く同じ患者さんアンケート調査をお願いしました。ご協力いただきました患者さんには、この場をお借りして、心から御礼申し上げます。前回の調査から2年しか経っていませんが、改築後の広くなった待合いスペースが、患者さんの意識にどれくらい影響があったかに非常に興味がありました。結果ですが、ポイント評価の部分について以下に2009年と2011年を比較してみます(上に述べたような5段階評価で、満点が10ポイントです)。

2009年 2011年
スタッフ応対面 5.26 5.32
医師応対面 5.72 6.23
時間関連面 3.47 4.46
施設設備面 4.02 6.63

予想どおり一番ポイントがアップしたのが『施設設備面』でした。患者さんの採点を細かく見ると、2009年には『施設設備面』で満点の『最高!』を付けてくださった方は0%でしたが、2011年には26.6%もいらっしゃいました(2番目の評価の『とても満足』を加えると、今回は80%を超えていました)。また、この2年間では診察までの待ち時間はあまり変わっていないはずなのですが、『時間関連面』も評価が上がっています。やはり、座るところもないような大混雑の待合室で待つ時間は、ゆったりした空間の待合室と比べて、同じ待ち時間でも体感的に2倍にも3倍にも感じられたということなのでしょう。スタッフ、医師の応対面での評価がわずかにアップしているのも、待ち時間中のイライラが減ったことが影響しているのかもしれません。

経済的な負担は相当ありましたが、昨年の改築はやって良かったと、今回のアンケート調査の結果を見て改めて感じました。私はどちらかといえば、『医療は入れ物よりも中身が大事』、『多少、院長の愛想が悪くとも、医療の内容が第一』という方針でやってきましたが、『見た目も大事』だなぁと思えるようになってきました。昨年の改築に際しては、GEN設計さんや太陽機工さんとご一緒に考えて進めてきましたが、設計や建築という仕事もインパクトのある大変面白い仕事だと思いました。改めて関係各位にお礼を申し上げたいと思います。

患者さんアンケートの中で、自由に文章で書いていただいた当院の『良いところ』『改善すべき点』の内容については、長くなりましたので次回のコラムで報告させていただきます。

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