2013年11月29日
先日、某N証券の主催する、一般の方向けの健康セミナーの講師として、講演を行いました。私は株や投資関係は全くと言っていいほど興味がない人間ですので、証券会社さんとのお付き合いは一切ないのですが、今年の夏に中高および大学の同窓会の先輩である内科の先生から電話がかかり、『シロウトさん向けの健康セミナーの講演をこの間やったんだけど、誰か眼科関係の先生紹介してもらえませんかって言われたんで、中野先生のお名前挙げてもいい?』って突然言われました。尊敬する先輩からのお願いですので、断るわけにもいかず、二つ返事で引き受けました。その後、N証券の担当者の方からも連絡があり、11月のセミナーでの講演をお引き受けした次第です。
聴衆は、証券会社の顧客で60代~70代の方が中心とのことで、高齢者に多い病気のお話のご希望が多いとのことで、アンケートをとると眼の病気のお話の要望が結構多いのだとか。そこで、年をとればほとんどの方が罹る『白内障』をテーマに選びましたが、TVの健康番組に出てくるようなお話ばかりではつまらないだろうと考えて、『白内障手術の過去・現在・未来』というちょっと大層な演題にして、白内障手術のルーツから発展の歴史、現在の手術や眼内レンズのこと、最先端技術と今後の展望までを1時間でシロウト向けに喋る、という大胆な企画にしました。
開業前には学会での自分の研究発表とか、シンポジウムや招待講演とか、自分の専門分野の関係者の前では数百人を相手に喋ったことは何度もありますが、開業後は同業者相手の短い研究発表がほとんどで、患者さんやその家族以外の不特定多数の一般の方相手の講演は初めてでした。でも製薬会社の方に頼まれて、社員の方相手の講演をしたことは何度かありますし、『あの時のスライドなどをチョチョイと改変すれば何とかなるだろう』と気軽に考えてました。しかし、いつものように頼まれた日まであと2週間ぐらいになって、過去のスライドファイルをざっと見てみると、やはり今までの自分の講演や発表は、眼科医や医療従事者、眼科関係の製薬業界の方を対象にしてきたので、スライドの中の用語にも医学用語が頻発で、一般のご高齢者には理解不能かも?!ということに気がつきました。
仕方なく、一からストーリー展開を練り直し、画像収集や手術ビデオ編集、文献での勉強もすべてやり直して、ほとんど一週間は晩酌を中止して、講演用のスライド造りに没頭しました。内容は、紀元前から行われていた墜下法に始まり、嚢外摘出術、嚢内摘出術、Ridleyの初めての眼内レンズ手術、現在の術式のPEA+IOL、最近話題のFemtosecond Laser手術、多焦点眼内レンズなどなど、実際の手術映像を交えながら、かなり1時間に詰め込んだ内容の講演になりました。
なんとか準備完了して当日、会場のN証券会議室に出向くと、約140名の聴衆がびっしりでした。よく見ると、当院に通院中の患者さんも数名見受けられます。リハーサルは特にしませんでしたが、時計をチラ見しながら時間調整して、ほぼ1時間ぴったりで予定通り喋り終えることが出来ました。100名以上の方を相手にお話しするのは久しぶりのことでしたので、結構最初は緊張しましたが、始めてしまえば何とかなるものですね。
ただ、医学関係者でない一般人にどれくらい興味を持っていただける話が出来たか、手術映像なんかも出したので刺激が強すぎなかったか、などが気になりましたが、質疑応答の時間もかなり活発に質問してくださる方もいて、時間目一杯使い、終わってからも演壇に近づいて来られて個別に医学相談する方もおられて、喋りっぱなしで1時間半が過ぎました。
講演後にも、感想などのアンケート用紙を配られてたので、後日、担当の方に聴衆からの感想をまとめて持ってきていただきました。『ネガティブな意見でも今後の参考に是非教えてください』とお願いしていたのですが、幸い?好意的なご意見ばかりでホッとした次第です。以下にいくつかを載せておきます。
- やがて手術しなければならないと思いますが、その時の対応の仕方の参考になりました。白内障手術について安全性など理解でき安心しました。
- 歴史も踏まえられてのご説明で大変解りやすかったです。手術予定があるのでレンズを含めての解説は参考になりました。
- 眼科医師はすごい手術をされているのですね。
- 映像がきれいで分かり易く、手術の全容が理解できました。これからやってくる白内障に気持の面で対応できるようになった気がします。ありがとうございました。
- 先般、白内障の手術を行いましたが、どのような手術が行われたか分かりませんでした。本日の講演を聞いてよく理解できました。
- 白内障の手術をすることに迷っていましたが今日の先生のセミナーを聞き安心致しました。
準備には思った以上に時間を取られて大変でしたが、まずまず聴衆には好評だったようで、こちらも安心致しました。初めてでしたが、面白い経験をさせていただきました。