2014年12月29日
今年もあと3日を残すだけとなりました。このコラムもこの数年サボってばかりで、時々見てくださっている方達から、「もっと更新しなさい!」とお叱りのメールを頂くこともありました。いつも(来年こそは月に一本ぐらい書いていこう)と決心はするのですが、年々時間の経つのが早く感じられて、あっという間に数ヶ月経ってしまうのです。よく皆さんが、『子どもの頃は、早く時間が経たないかなぁと思ってたのに、歳をとると時間の経つのが異常に早く感じるようになった』って言われますが、これはおそらく日常生活の中で、幼い頃には日々小さな発見に感動していた、その感受性が衰えているためじゃあないかと思います。あまり日常生活の中で驚いたり感動したりしなくなったのか、昔のことはよく覚えているのに、先週何かあったっけ?という感じです。眼科に来られるかなりご高齢の患者さんを見ていても、視力がメガネかけても(0.3)ぐらいになって白内障手術をお勧めしても、『いや、よく見えますよー。運転も普通に出来るし』と言われる方が時々います。これもやはり見えないことが気にならなくなったという、感受性の衰えなんだろうなぁと思います。もしそうだとすると手術して視力の数字を改善しても、運転が安全になるかどうかは疑問が残るところですね。
例年のように、今年の最後に一年を振り返ってみたいと思います。
まず、仕事の面から。今年の始めに近隣に新たに眼科クリニックがオープンしたので、外来の患者さんはその方面からが若干減って、待ち時間は少なくなっている気がします。しかし、患者さんの年齢層が高齢化して来ているためか、逆に白内障手術希望の患者さんは増えました。2014年は、開院以来で最多の526眼の白内障手術を行いました。手術数は増加しましたが、一例あたりの手術時間は2分程度短縮し、術中合併症も更に少なくなりました。今年は、外傷性白内障と思われる眼のチン小帯断裂(元々、一部切れてたため)が一例あっただけで、後嚢破損や、硝子体脱出は昨年に引き続き、0%で済みました。時間短縮と安全性向上には、ちょっとした手術装置の改良も一役買ってくれています。一般の方にはまったく通じないマニアックなことなんですが、2010年から当院で使っているAMO社Signatureという白内障超音波乳化吸引装置の尖端のチップを、”Solution tip”という新しい形状のものに今年始めから変更し、今までペリスタルティックポンプで行っていた乳化吸引のところもベンチュリーポンプで安全に行えるようになったためです(眼科手術医以外にはまったく意味不明でしょうが、、)。要するに、手術装置の持っているポテンシャルを最大限に引き出せる小道具を採用したということです。ほんの数cmの部品一つで手術がかなり変わるので、そこがまた眼科手術の奥深く、面白いところです。
広島の地元で大きな出来事といえば、8月の土砂災害です。あんなに開けた住宅地で、まさかあそこまでの災害が!と驚きましたが、広島市は山と海に挟まれて、山を切り崩して住宅地を開発して発展して来たので、このような土石流が起こってもおかしくない地域がそこらじゅうにあるんですね。私たちのクリニックがある地域はこのたびはまったく被害がありませんでしたが、すぐ山側では小規模な崖崩れもあったようで、人ごととは思えませんでした。ボランティアに駆けつけたいところでしたが、もうそういう若さもないので自分たちにまず出来ることとして、クリニックと個人両方で、義援金で協力させていただきました。
広島で明るい話題といえば、広島カープでした。残念ながら、最後の最後で息切れしてしまいました(個人的には、采配次第では優勝できてたのじゃあないかとも思いました)が、2年連続でクライマックスシリーズに進出し、菊池や丸など若手もずいぶん成長して来ました。監督も交代となり、さらに昨日、NYヤンキースから黒田投手が帰って来るという信じられないようなビッグニュースが飛び込んできました。年棒が15億円以上下がるのにも関わらず、自分にまだ力があるうちにカープに復帰して野球人生の最後を自分を育ててくれた広島で、という男気には脱帽、ただただ感動です。これで、来シーズンのカープはもっと盛り上がること間違いなしです。私も今シーズンは、マツダスタジアムに11試合観戦に行きました(6勝5敗)が、来年はもっと行きたいですね。来シーズンが今から楽しみです。
個人的な今年の話題といえば、自分の専門以外のことで初めて本に載ったことぐらいでしょうか。実は私も結構食いしん坊で、食べ物に関してはかなり守備範囲が広いのですが、特にB級グルメで最近ハマっていたのが、新広島名物となりつつある(?)汁なし担担麺です。2年ぐらい前から、新しい汁なし担担麺専門店が増えて来たのをきっかけに食べ歩くようになり、元々のマニアックなハートに火がついて、20店舗以上を食べ比べて来ました(やはり好みは、三つの”K”ですが)。そのことをちょっと広島市医師会だよりに駄文のエッセイとして書いたら、汁なし担担麺ブームの仕掛人みたいな方から、「取材させてください」との連絡があり、その方の書いた単行本に顔写真入りで載ってしまいました。一部のマニア向け雑誌か何かかなと思ってたら、普通の立派な本で、一時期書店で平積みになってたりして、ちょっと恥ずかしい思いをしました。
あと忘れては行けないのが、自分の中で眼科医としては2014年の一番のビッグニュースは、やはりiPS細胞が世界で初めて、眼科領域で加齢黄斑変性症の治療に臨床応用されたという話題でした。このプロジェクトのリーダーである理研の高橋政代先生とは京大眼科の同門で大学院時代に同じ研究室にご一緒でおりましたし、また移植手術を実際に執刀した栗本康夫先生とも同門であり神戸中央市民病院で一緒に勤務していたという昔のご縁があったので、非常に関心を持っていましたし、心から成功を願っておりました。最初の一例目は安全性の確認という意味合いが強いのでしょうが、非常にうまく行ったようで本当に喜ばしいニュースでした。来年からもまた症例を重ねて、いつかは自分たちの周りの患者さん達にも使えるように、実用化への道がさらに開けていくことに期待したいと思います。
さて、来年はどういう一年になるのでしょうか。来年こそはもうちょっとマメにこのコラムの更新もしたい、と毎年誓ってはいるのですが、どうなることでしょう(笑)?
皆様にとって、明るい話題が多い一年になることをお祈りしつつ、今年はこれで締めたいと思います。