2015年5月7日
今年もまた、HPの院長コラムの更新が滞っておりましたが、まずは4月第3週に開催された第119回日本眼科学会総会に行って来ましたので、その報告から。今回は札幌市での開催ということで、広島空港から新千歳空港までの直行便で行く予定にしていたのですが、出発の2日前に起こったアシアナ航空機の事故のために、搭乗予定の便は欠航になってしまいました。急遽、岡山空港からの便に振替となって、始発の新幹線で岡山に向かい、なんとか無事に札幌へ到着できました。広島空港の計器着陸誘導設備が破壊されてしまったため、帰りの便も雨天のために広島行きは全便欠航になってしまい、帰路も岡山経由でした。
学会ではシンポジウムや教育講演を中心に、興味のある分野だけでなく、むしろ自分の専門外の分野の知識をアップデートすべく、勉強して来ました。
学会の直前に当院に新しく導入した検査機器についての発表もいくつかあったので、興味を持って聞いて来ました。その装置は、ERG(Electroretinogram:網膜電図)記録装置の新機種『RETeval(レチバル)』です。ERGとは網膜に光が当った時に生じる神経網膜の活動電位で、様々な網膜ジストロフィや変性疾患などの診断で欠かすことの出来ない有用な検査です。また、極端に進行した白内障等の混濁で、網膜の状態が眼底検査しても見えない時にも、ちゃんと網膜が機能しているかを確認することが出来ます。しかしながら昔のERG記録装置は、光刺激の装置が大掛かりだったり、大きなコンタクトレンズ電極を眼につけたり、ベッドで寝た状態で記録したりと、患者さんにとっても医師にとっても若干面倒なハードルの高い検査でした。
当院で導入した新機種RETeval-Cは、今までのERG記録装置と違うのは、1)驚くほど小型になり、コードレスの手持ちの装置で、どこでも、患者さんが座位でも記録できる。
2)電極が下眼瞼に貼る皮膚電極で、コンタクトレンズ電極を眼に入れることが難しい小児でも検査可能。3)瞳孔を大きく拡げる散瞳剤を使用しないでも検査でき、錐体、杆体、フリッカーのすべての記録が可能などの利点があります。しかし、まだ日本に導入されて1年も経っていないような装置なので、どの程度信頼性のある記録が出来るのか、購入に際して不安もありました。
(←副院長が実験台になって検査中の様子)
今回の学会では、ERGの超スペシャリストである三重大の近藤教授の教育セミナーでもRETevalについて詳しく紹介されてました。近藤先生のご講演でも、『従来からあるERG記録装置と同等程度の信頼性のあるERGが記録可能で、上記のような利点もあるので、今後の普及が期待できる』とのお話で、早期に導入した当院としても安心した次第です。ただし、皮膚に貼る電極がやや高価で使い捨てです。検査点数(診療報酬)の約半額が電極代として飛んでいきますので、機械のお値段と検査対象となる疾患の頻度を考えると、経済的にはまったくペイしない装置である、というところが痛いところです。
今回の学会は、久しぶりの北海道での開催だったので、休診にして職員の希望者も連れて参加しました。せっかくはるばる北海道まで来たので、息抜きの観光もしてきました。私の母校でもある北海道大学のキャンパスにも30年ぶりに訪問して、同級生の教授にも会いました。一番面白かったのは、3月までNHKの朝の連ドラで放送されていた『マッサン』の舞台にもなった余市のニッカウイスキーの工場見学でした。さすがに連ドラ放送終了直後だったので、観光客で大にぎわいでしたが、マッサンとエリー(本当はリタ)の生活を忍ばせる展示もあり、最後にウイスキーの試飲もして楽しめました。
今回の学会は、広島空港での事故の影響で飛行機の件だけは振り回されましたが、北海道の気候も学会期間中は穏やかで、勉強と息抜きの両方の面で非常にリフレッシュできたいい旅でした。学会で学んだ新しい知識をまた日常診療にも活かしていきたいと思います。