院長のコラム

2015年を振り返って(1)

今年もまた、忙しさにかまけてこのコラムの更新をサボっているうちに、もう年末休みになってしまいました。毎年のように、外来受診された患者さんと一緒に『1年が経つのが早いですねぇ』とため息をつくのが恒例になってしまいましたが、今年の出来事を振り返ってみたいと思います。

 

まずは、広島の一年の出来事ですが、個人的に一番印象に残ったのが、広島スポーツ界の出来事。昨年の今頃、広島の街はメジャーリーグ、ヤンキースで活躍中の黒田博樹投手がカープに復帰するというニュースで大変な盛り上がりでした。10億円以上の年収減など気にもせず、自分の残り少ない野球人生を古巣カープの優勝のために捧げたい、という『男気』が流行語にもなりました。

 

円熟期を迎えているエース前田健太投手、打撃陣では中心選手といえるまでに成長して来た菊池、丸、両選手などの戦力充実、さらに阪神から新井選手も復帰とくれば、新監督の緒方監督を中心にチームが纏まれば、24年ぶりの優勝も狙えるとファンの期待は大きく膨らみました。年間指定席があっという間に完売したのも無理もないと思われました。

 

昭和50年のカープ初優勝時に高校1年生であった私はもちろん永年のカープの大ファンです。今年はチケットの取りにくい中、副院長や当院職員、友人などと一緒に15試合ほど生観戦、応援にでかけましたが、意気込んでいた分、今年ほど『裏切られた感』でがっかりした年もありません。期待の外人補強も、想定以上の当たりだったジョンソン投手以外はまったくの期待はずれに終わりました。

 

カープに関しては、何よりもがっかりだったのが、ベンチワークです。強力な先発投手陣を擁して、チーム成績でいえば防御率がリーグ2位、打撃はまったくの貧打でしたが、終わってみれば得点はリーグ3位ですが、クライマックスシリーズにすら残れませんでした。1年間見続けていて、非常に歯痒かったのが、1、2点差で落とすゲームが多かったことです。選手起用にも偏りが多く、調子の悪い選手をずっと固定して使い続けたり、2軍で絶好調の選手を上に中々上げず、調子が下り坂に入ってからちょっと上げるだけで、選手起用法に不満がつのりました。カープ黄金時代のような不動のスタメンを年間通じて組めるほどの打線ではないので、監督、コーチをはじめとするベンチ、そして首脳陣の人選を含めてチーム編成をするフロントの責任は重大です。投手起用もシーズン当初からヒースの抑え起用が失敗し、大瀬良の中継ぎがようやくはまって来たかと思えば、また酷使の連投で打たれたり、投手コーチの力量にも疑問を感じました。シーズン終盤には、名コーチの誉れ高い新井バッティングコーチと緒方監督の確執が表面化し、新井コーチの方が辞めてしまうという事態になりました。

 

来年は、マエケンもいなくなりますし、黒田も残留を決めてくれはしたものの若い時のようなフル回転は期待できません。全く実績のない新人や、新外人に期待せざるを得ない、今年よりも苦しい陣容です。せめて、監督、コーチぐらいは即戦力となる指導者を引っ張って来てくれれば良かったのですが。来シーズンがどうなるのか、開けてみなければわかりませんが、野球の名監督と呼ばれて来た人たちの多くは、永年監督をやって行くうちに育って来た人はあまりいません。実績を上げて長期政権を築いた監督は、1年目からそれなりの実績を上げている人がほとんどです。今年のヤクルト真中監督、ソフトバンク工藤監督も1年生でした。選手と違って、経験で育つというよりは、人心掌握力、洞察力などがものをいう世界、向き不向きもあるのでしょう。

 

今年は年間指定席も完売、連日の満員御礼、カープグッズも空前の売り上げと聞きます。その上に、マエケンのメジャー移籍で20億円以上の保証金も入ってきます。もう、「カープは貧乏球団だから、、」とかいう言い訳も通用しません。オーナーにももう少し、ファンに対する恩返しとは何をすることなのかを、勝つためには何が必要なのかを考え直して欲しいものです。初優勝の前には、礎となる外部からの監督、コーチの招聘でチームの基礎をレベルアップして来たことが原動力になったことは、古くからのファンには周知の事実です。OBにも黄金時代のメンバーで、他チームでコーチや二軍監督を経験して実績を上げている人が何人もいますし、まず、ベンチとチーム編成の根本から考え直して欲しいものです。

 

カープの不甲斐なさを語りだすと、ついつい熱くなってきますが、今年の広島スポーツ界の『あっぱれ』は、文句なくサンフレッチェ広島です。私はサッカー事情にはあまり詳しくありませんが、毎年のように金満球団に主力選手を引き抜かれる中、森保監督は就任4年目で3回の優勝と、素晴らしい結果をだしています。その理由はやはり、育成を大事にして、下部組織から有望な若手が育つ土壌を持っていること、そして監督の戦術がチーム全体に浸透して、上から下までの意思疎通が完璧になされているということでしょう。監督とコーチが口もきかない、選手がコーチのことを信用していない、カープベンチにはサンフレ森保監督の爪の垢でも煎じて飲ませたいぐらいです。

 

サンフレッチェには、はやく専用スタジアムを作ってあげたいものです。一市民としては、やはり旧市民球場跡地、あるいは中央公園辺りの市街地のど真ん中に作られることを希望します。市民球場跡地に新スタジアムが出来れば、毎試合でも応援に行きたいと思います。市長さんらが宇品を推されていると聞きますが、一般市民でそちらを支持している人をほとんど知りません。何か利権など、裏の大人の事情があるのでしょうか。どう考えても市内の中心部の方が、経済効果も大きく、カープと併せて広島スポーツ界の両輪として広島を活性化して行くのにふさわしいサッカースタジアムの場所は市民球場跡地周辺しかないと思うのですが、、。

 

最後に、広島のスポーツで今年触れないわけに行かないのは、世羅高校の男女同時の高校駅伝全国制覇でしょう。男子は連続優勝、そして新記録です。世羅高校といえば有名な古豪で、数多くの名選手、指導者を陸上界に輩出し続けていますが、あの田舎で成果を出し続けることで、またいい生徒が集まって来る、完全な好循環です。ある記事に、世羅高校駅伝部の岩本監督のことが次のように紹介されていました。
『岩本監督は元中学教諭。目標を持つことの大切さ、与えられるより自ら考えてチャレンジすることの意味を伝え、スランプで悩んでいても積極的に介入せず「待つだけです」と言う。子どもたちの将来性を伸ばす指導がチームづくりの骨格にある。』
プロスポーツの監督とは違って、やはり教育者ですね。このような監督の下で学べる選手達は幸せです。

 

さて、2016年の広島スポーツ界は、どうなるでしょうか。そろそろカープファンに、特に優勝を一度も知らない我々の子供達の世代に、優勝を見せてあげたいですね。今年のような『優勝するする詐欺』を繰り返していると、近い将来には、『広島を代表する球団はサンフレッチェです』っていうのが定着しちゃうかも知れませんよ。

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