院長のコラム

2017年を振り返って

ついに2017年も院長のコラムを一回も更新することなく、年末を迎えてしまいました(昨年も同じことを書いてますが、、)。
当院ではFacebookページも作っており、そちらの方は時々書き込んでおりますので、ご覧いただけましたら幸いです(ホームページのトップページからリンクも貼ってありますので、クリックしてみて下さい)。

 

今年、当院に新たに導入した設備としては、7年ぶりに白内障手術装置を更新いたしました。今まで使ってきたAMO社のSignatureの後継機種となる“Signature Pro”です。他社のマシンと一番の違いは、白内障を吸引除去するためのポンプに、ペリスタルティック・ポンプとベンチュリー・ポンプという特徴の異なる2種類のポンプを搭載している点で、この基本コンセプトは“Pro”になっても変わりません。専門的な細かいところは、ここでは省略しますが、わかりやすく一言でいえば、『手術の効率性を向上させながらも、安全性もより高めた』といって良いでしょう。実際に使ってみて、手術時間は若干短縮されましたが、術者として術中の安心感も向上し、ストレスが減ったという印象です。

 

また、今年は新しい眼内レンズも登場しました。従来から当院でも多焦点眼内レンズは希望される患者さんには使用してきましたが、色々と欠点もあったので、さほどは積極的にはお勧めしていませんでした。
多焦点眼内レンズは、白内障術後に眼鏡なしで遠くも近くも見えるのは良いのですが、問題点として、
1)まずコスト。健康保険が使えませんので、全額患者さんの自己負担になります。
2)コントラストの低下:眼内レンズを通過する光を遠近に振り分けますので、どうしても保険で使える従来の単焦点レンズと比べて、像のクッキリ度(コントラスト)が落ちます。
3)グレアー、ハロー:夜間に街灯や信号など見ると、尾を引く様に見えたり、大きなリング状の輪が見えたり、見え方の不自然さをかなり気にされる方もいます。
4)不耐症:Waxy visionとも呼ばれますが、手術は上手くいって、レンズも問題なく入ったのに、なぜか遠近ともに視力が出ない、「遠くも近くもぼやけて何もできない」と訴える方が稀にいて、最終的には多焦点レンズを摘出して単焦点レンズに入れ替える再手術にいたることがあります。頻度は稀ですが、どの様な方がそうなりそうかという予測がつかないので困ります。不耐症の患者さんが出ると、医師も患者さんも非常にストレスで、鬱状態になったりしたケースも学会などでは耳にします。

 

数年前から欧米で使用され始め、今年から日本にも導入された新しい眼内レンズがEDOF (Extended Depth Of Focus) レンズと呼ばれるもので、当院でもこの眼内レンズ『テクニス・シンフォニー』を採用しました。
この眼内レンズの特徴は、
1)遠く~中間距離~50cmくらいまでが非常に良く見える。
2)光のロスが8%程度と少なく、コントラスト感度が単焦点レンズと遜色ない。
3)グレアー、ハロー、がかなり少ない。
4)不適応(Waxy vision症例)の方が、ほとんどない。
という利点があり、30cm以内の小さな文字の読書などには軽い老眼鏡が必要な場合も多いのですが、それ以外の欠点がかなり解消された眼内レンズとして評判を呼び、欧米では最近は7割程度のシェアを占めていると聞いています。
当院でも、今年の夏から多焦点眼内レンズを希望された3名の方にこの『シンフォニー』を使用しましたが、あまり大きな問題はなく、私は好印象を持っています。
全ての人に向いているレンズというわけではありませんが、従来のものよりは使い易い多焦点眼内レンズとして、お勧めできると思います。

 

そしてもう一つの欠点、コストですが、平成29年9月1日から、当院は「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」を先進医療として実施する医療機関として承認されました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/
先進医療とは、厚生労働省が定める高度な医療技術を用いた治療のことで、将来的に健康保険等の適用が検討されている技術のことをいいます。すなわち、現時点では「健康保険が適用されない治療」ということで、手術費用(眼内レンズ代金を含む)だけは全額自己負担となりますが、先進医療実施施設で手術を受けた場合は、手術以外の診察料、検査料、薬代などは健康保険が使えます。また、ご自分で民間の生命保険などに加入しておられる方で、「先進医療給付特約」を付けて契約しておられる場合は、先進医療承認施設で手術を受けられた場合、自己負担分が生命保険から給付されます(手術証明書などの記載が必要)。

 

白内障手術は、眼科医療の中でもこの2、30年で大きな進歩を遂げてきた分野で、手術装置も眼内レンズも、もう行き着くところまで来てしまったのではないかと思う時期もありましたが、まだまだ進化に眼が離せません。来年以降も、私たちも更に勉強、情報収集を続けて患者さんに最高の結果を提供できるように努力を続けて行きますので、よろしくお願い申し上げます。

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