お知らせ

2019年を振り返ってーその1

決まり文句ですが、早いものでもう1年が経ち、2019年もあと二日を残すのみとなりました。この数年は日本中で、地震や豪雨や台風などの大きな天災が起こらない年がないのですが、2020年は東京オリンピックも開催されますし、日本にとっていい一年になってほしいものです。

 

古江中野眼科の2019年を振り返ってみると、今年は職員の入れ替わりが多い年でした。当院は何年も前から定年を65歳に定めていますが、65歳を過ぎてもまだ働く意欲と能力を十分持っている方には、非常勤で雇用延長をしています。今年は看護師と受付事務職で70代になっても働いておられた大ベテランが退職となりました。長年に渡って、当院と患者さんのために献身的に働いていただいて、本当にありがとうございました。ご両名ともにまだ少し余力を残して、惜しまれながら引退するという理想的な形だったのではないかと思います。また若い職員でも医療以外の職種への転身、結婚やご家族の転勤、出産などで退職された職員も数名、もうすぐ産休に入る方もいます。最近はどの分野でも人手不足が叫ばれて、医療業界も例外ではなく、看護師や視能訓練士など専門職の欠員補充も難しい時期がありますが、”ONE TEAM”で乗り切っていきたいと思います。

 

設備面では、今年新たに採用した検査機器としては、新しい眼底カメラがあります。超広角レーザー走査型眼底カメラ Optosという装置です。従来の眼底カメラは1枚の写真で撮影できる画角が40-50度程度でしたが、Optosは最大200度と(上下方向は瞼でかなり隠れてしまいますが)、瞳孔を拡げる散瞳点眼薬の処置なしでも超広角撮影が可能です。従来の眼底カメラより優れている点としては、

 

1. 1枚の撮影で散瞳処置なしに広い範囲の網膜が撮影可能であること(従来の眼底カメラで5、6枚以上に分割して撮影していた範囲がワンショットで撮影できます)。

 

2. レーザー光源で走査するため、従来のカメラのフラッシュほど眩しくなく、患者さんの苦痛も少ないこと。

 

3. レーザー光源は散乱が少ないので、軽度の白内障があっても、従来の眼底カメラよりは鮮明な画像が得られること。

 

4. 赤と緑色の波長のレーザー光源で得られた画像を合成しているので、緑レーザー(短波長)の画像だけにすると網膜表層の神経線維層の欠損(緑内障診断に有用)が分かりやすく、赤レーザー(長波長)の画像だけで見ると網膜深層から脈絡膜血管の様子が分かりやすくなること。

 

5. デジタル画像なので、一部分の拡大や色、コントラストなど変えた画像処理が容易であること。

 

6. 広角画像なので、どこに病変があるかなど、患者さんへの分かり易い説明が可能となったこと。

などの特徴があります。

特に、瞳孔を拡げる散瞳点眼薬の処置なしでも超広角眼底撮影が可能になったことのメリットは大きく、実際に飛蚊症の訴えで来院されて、自覚症状がなかった反対の方の眼に網膜裂孔がたまたま発見されたケースもありました。慢性の眼底疾患で通院されている方でも、検査後5、6時間は見えにくくなる毎回の散瞳検査の頻度が減らせるのも、患者さんにとっては大きなメリットだと思います(網膜の最周辺部まで全部が写るわけではないので、散瞳検査が不要になるわけではありません)。

このOptosは10年くらい前から日本に導入されていましたが、1,000万円以上もする非常に高価な装置の割に保険点数は従来のカメラと同じ58点(580円:3割負担の方で170円程度の支払い)の検査料ですし、「これがなければ見えないものが見えてくるわけでもないし、他の機器メーカーもいずれ追随してもっと改良版を出してくるだろう」と思って、発売当初は様子見でした。しかし、数年して他社も出してきた広角眼底カメラは複数枚数の撮影と画像合成が必要だったり、Optosを凌駕するものがなかなかありませんでした。先に導入された同業者の先生方が絶賛されているのも耳にし、今年やっとデモ試用期間を経て、購入に踏み切りました。以前のコラムでも登場した、これも網膜疾患の診療には必要不可欠なOCT検査(https://furue-nakano.com/?p=468)を同じ日に行った場合には、健康保険のルールでOptosの検査料58点すら算定できませんので、無料で撮影していることも非常に多く、耐用年数中にコスト的に元が取れる検査機器ではありませんが、私たちにも患者さんにもメリットが大きい装置ですので、購入してよかったと感じています。

 

古江中野眼科は外見上は全面改装以来、もう10年が経過して代わり映えしませんが、中で働く職員、検査機器、手術機器も含めて、その中身は年々変化しています。

『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。』

この方丈記の一節にもあるように、中身が淀んで腐ってしまわないように、これからも常に流れることを止めず、日々進化して行きたいと思っています。

 

今年もたくさんの患者さんに来院していただき、白内障手術も毎週実施してきました。最近は月曜日の祝日が多くて手術日が潰れることも多く、また令和の時代への移行で特に長い休みも多かったので、白内障手術件数も467眼とやや少なかったのですが、先進医療である「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」も全体の6%程度になりました。この多焦点眼内レンズ手術は、2020年4月からは先進医療の指定から外れることがほぼ決まったようです。今までは患者さんが自分で入られている生命保険で「先進医療特約」を付けて契約されていれば、実質の自己負担はありませんでしたが、かなり高額な眼内レンズですので、4月からの制度の詳細はまだ現時点では決まっていないようですが、もう少し安価に使える仕組みを作っていただければと思います。

 

オリンピックイヤーの2020年は、どんな年になるのか楽しみです。当院と患者さんにとっても良い年になるように願っています。来年もよろしくお願い申し上げます。

 

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