院長のコラム

2021年を振り返って – その2

さて、年末コラム恒例の「その2」は今年のカープです。
昨年はコロナ禍でシーズン開幕が遅くなり、交流戦も中止されて120試合しか行われないイレギュラーなシーズンでしたが、今年は観客の入場制限こそあったものの143試合のシーズンでした。結果は、みなさんご存知の通り、63勝68敗12分、勝率.481のセリーグ4位に終わりました。

 

スタートダッシュにも失敗したのですが、特にひどかったのがパ・リーグとの交流戦で、3勝12敗3分、勝率.200で、12球団中ぶっちぎりの最下位でした。交流戦あたりから秋口まで最下位争いで低迷し、最後に少し盛り返しましたが4位がやっとという有様でした。

 

今年も私(院長)なりに独断と偏見で2021年のカープについて分析をしてみると、
1. 投手陣
単純にいうと、「駒不足」でした。個々の投手をみると、主力投手は期待から大きく外れることなく、結果を出していると思います。エースの大瀬良は、昨年は故障で離脱して手術という最悪のシーズンでしたが、病み上がりのシーズンにもかかわらず、10勝5敗で防御率3.07、6回を投げて自責点3点以下のクォリティスタート(QS )率はセリーグでダントツトップの87%、WHIPは1.13でした。

 

WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched、「投球回あたり与四球・被安打数合計」)とは、野球における投手の成績評価項目の1つで、1投球回あたり何人の走者を出したかを表す数値。与四球数と被安打数を足した数値を投球回で割ったもの。一般に先発投手であれば1.00未満なら球界を代表するエースとされ、1.20未満ならエース級、逆に1.40を上回ると問題であると言われるそうです。

 

昨年の新人王、森下も8勝7敗と昨年ほどの活躍ではなかったものの、防御率は2.98、QS率はセリーグ2位の79.2%、WHIP:1.18でした。この2人の投手は、打線の援護さえあれば、もっとたくさん勝っていても全く不思議ではありませんでした。

 

そして去年までは今ひとつ殻を破れていなかった九里亜蓮も今年は13勝(9敗)で最多勝タイトルを獲りました。防御率3.81、QS率68%、WHIP:1.34のデータは上記2人には及びませんでしたが、粘って耐えて勝つパターンで頑張ってくれました。

 

しかし、この2人に続く先発投手の駒が足りなかった。高橋昂也、新人の大道、玉村など若手も頑張りましたが、今ひとつまだ力不足でした。しかし、後半戦になって床田が復活の兆しを見せてくれて、来季に向けて明るい材料でした。上記の若手も伸び盛りの年齢ですし、来季の方が楽しみです。

 

そしてなんといっても、特筆すべきは新人の栗林!今年はクローザーとして期待されたフランスアが早々と故障し、ルーキーながら抑え役を任された栗林が、期待以上の最高の働きをしてくれました。37セーブをあげて新人王を獲ったのはご存知の通りですが、防御率0.86、WHIP:0.94はいずれもチームトップ!セリーグの今シーズンの規定投球回数に達した投手(先発投手)では中日の柳が最優秀防御率:2.02、WHIP:1.01でしたから、栗林の成績がいかに凄いものかがわかると思います。

 

今年のドラフトでは、即戦力になりそうな投手を中心に指名しました。今年頑張った中継ぎ投手陣(塹江、島内、菊池保、森浦、ケムナ、コルニエルなど)に加えて、新人投手の中から数名出てきてくれればと思いますが、優勝を狙うためには先発の柱の1人になる外人投手をもう1人補強して欲しいと思います。

 

2. 打撃陣
打撃陣は単純に言えば「鈴木誠也次第だった」と思います。今年はキャンプイン前からスイング改造を公言していました。軸足に体重を残し、ボールの軌道にそってバットを出す、一見アッパースイングにも見えるフォームは、近年メジャーリーグを席巻していた「フライボール革命」を意識したものだったと推測します。現状に満足せずにフォームを思い切って変えてまで理想を追求する姿勢は、さすが鈴木誠也だと思っていましたが、結果的にはこれは失敗でした。前半戦の不振、特に得点圏のランナーがいるときの勝負弱さが際立っていました。オリンピックで侍JAPANの4番を任された頃までは、ダメダメでしたが、秋口になって以前のようなスイングに近いものに戻してきてからは、ガンガン撃ちまくって最終的には打率.317で首位打者を獲ってしまったのは流石でした。ホームランもセリーグトップの村上、岡本の39本に迫る38本でしたが、前半の勝負弱さが響いて、打点はトップの岡本の113打点に遠く及ばない88打点に終わりました。しかしながら、セリーグの打者で唯一OPSが1を超えていた(1.072)のは、やはり凄い打者です。昨年のコラムにも書きましたが、誠也がフルシーズン活躍すれば、間違いなく三冠王を取れる実力はあると思うだけに、来シーズンはメジャーリーグ挑戦でカープから抜けてしまうのは残念!と言うか、超痛いです。

 

坂倉は、期待以上に急成長してくれました。ルーキーイヤーから、その打撃センス、軸のぶれないスイングの速さには驚かされましたが、プロ入り4年を経て、体ができてプロのスピードにも慣れて、一時は首位打者になりそうな勢いでした。最終的には誠也に次ぐ、リーグ2位の.315でしたが、まだまだ成長する伸びしろありありの打者だと思います。年季の必要な捕手というポジションではまだ未熟な面が目立つので、一塁手との掛け持ちで使わざるを得ず起用法が難しくなりますが、数年後を考えると捕手メインで育てた方がいいのかなと思います(意見が分かれるところだと思います)。

 

小園の成長も特筆に値します。打率ではチーム内3位の.298で、出場経験を積むほどに確実性が増してきました。3球目までに打った場合の打率が3割4分と高く、思い切りの良いバッティングが目につきました。今シーズンは、河田コーチをはじめとする首脳陣が田中広輔の起用にこだわりすぎ、彼の不振で落としたゲームも昨年と同様に数多かったと思います。この数年ずっと不調の田中広輔にかえて、小園をもっと早く先発起用していれば、打率3割は軽く行ったのではないかと悔やまれます。

 

他にも、後半サードで起用された林、持ち味の長打力の片鱗は見せてくれました。宇草も終盤起用され始め、タイプが似ている野間よりも打率、長打率ともに高く、来年が楽しみな選手だと思います。またドラフト1位で入団しながら、今シーズンも一軍にあげてもチャンスを大して与えられず燻っている中村奨成、打数が少なすぎますが、実は長打率、OPS共にチーム6位です。彼を育てる気が首脳陣にあるのか問うてみたいところです。

 

打撃陣に関しても、やはり長打の打てる外人選手が絶対に欲しいです。今シーズンのみでクビになったクロンは、真面目な性格は日本向きと思いましたが、バットに当たる確率が低すぎました。誠也がいなくなる来シーズンは、長打力のある選手の補強は不可欠ですが、ドラフト組のルーキーと新外人選手の中から誰か1人でも4番を打てる選手が出てきてくれないと厳しいと思います。

 

3. 首脳陣
今年2年目だった佐々岡監督、采配に関しては去年と大して変わりませんでした。コロナ禍で延長戦なしという特別ルールの中、9回で終わるのが分かっているのに、負け試合で代打を出すこともなく、戦力をベンチに残したまま負けたゲームも数々あったように記憶しています。選手の好不調の見極めも悪く、絶不調のベテラン選手を使い続けた序盤は、見ていて歯痒い思いが募りました。

 

投手陣では、セリーグ最多勝投手の九里、QS率リーグ1位、2位の大瀬良、森下、新人王で37セーブの守護神・栗林を擁し、打撃陣では打率首位と2位の鈴木誠也、坂倉がいて、ダイヤモンドグラブ賞9年連続の菊池がいて、チーム打率もリーグ1位の.264、この数字でなんでセリーグ4位に終わるのでしょうか???その答えは、ここで私が述べる必要もないと思います。

 

去年の最後のコラムで期待を述べた、出戻りの河田コーチも全くの期待外れでした。彼が去った途端に、高津新監督でヤクルトスワローズが昨年の最下位から優勝したのも皮肉な偶然でしょうか。

 

今年逝去された古葉竹識監督が懐かしいです。ヤクルト高津監督もそうでしたが、そういえば古葉監督も南海ホークスで野村克也さんの薫陶を受けた方でした。このところ元オーナーになってから続いている、生え抜きで他チームの釜の飯を食ったことがないOBだけを監督やコーチに起用するのは、再考した方がいいと思います。その意味で、来季の首脳陣では、メジャーでのプレイや阪神コーチの経験を持つ高橋建投手コーチに非常に期待しています。この数年、カープ投手陣に増えてきた若手の左腕投手をきっと育ててくれると信じています。

 

今年は誠也がカープ最後になるシーズンで、上に述べたように個人成績を出せる選手がそれなりにいて、優勝を狙えるチャンスでした。来季は鈴木誠也が抜け、佐々岡監督続投も決まって、今年よりも期待できないシーズンであると予想しますが、2015年に新井と黒田が復帰しても優勝できず、そのオフにマエケンがメジャーに行ってしまった時もそう思いました。にも関わらず、2016年から3連覇が始まったのは皆さんよく覚えておられると思います。あの時には救世主のように、誠也が育ってきてくれました。2022年もそうなることを密かに願って、今年のコラムを締めようと思います。

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